聞く紅茶教室
講義時間:約4分
第70講 紅茶とデザイン様式(7)
紅茶は「贈られる文化」になった
19世紀の終わり頃から、
紅茶は、
「贈るための商品」
としても広がっていきました。
紅茶缶には、
美しい模様が描かれます。
王冠。
植物模様。
金色の縁取り。
それらは、
単なる保存容器ではありませんでした。
紅茶が、
家の中へ入ってくる時の「顔」だったのです。
やがて百貨店が発展すると、
紅茶は、
「贈り物」としての価値をさらに強めていきます。
誕生日。
クリスマス。
引越祝い。
紅茶は、
「気持ちを包んで渡すもの」
になっていきました。
そして戦争の時代には、
前線の兵士へ、
紅茶缶が送られることもありました。
紅茶は、
体を温めるだけではありません。
「帰る場所がある」
という感覚を、
人に思い出させる飲み物でもあったのです。
だから紅茶は、
ただ消費されるだけの文化ではありません。
人から人へ、
時間や記憶を手渡していく文化でもあったのです。
くまのひとりごと
紅茶缶というものは、
どこか不思議です。
飲み終わったあとも、
なかなか捨てられない。
そしてそれは、
紅茶缶の再利用文化となりました。
手紙を入れたり、
裁縫道具を入れたり、
思い出をしまったり。
紅茶の缶は、
飲み終わったあとも、
人の暮らしの中に残り続けます。
それはたぶん、
紅茶そのものが、
「人に渡すための文化」
だったからなのだと、
くまは思います。