聞く紅茶教室

講義時間:6

第89講 英国紅茶

アフタヌーンティーはなぜ生まれたのか

こんにちは、森のくまです。

前回は、六大茶を香りの地図として眺めてみました。

今回は少し視点を変えて、お茶を飲む人々の文化を訪ねてみましょう。

最初の目的地はイギリスです。

紅茶の国。

アフタヌーンティーの国です。

さて、皆さんはなぜイギリス人が午後になると紅茶を飲むのか、ご存じでしょうか。

実は、その背景には19世紀の生活習慣があります。

当時のイギリスでは、昼食と夕食の間がかなり長かったのです。

午後になるとお腹が空いてしまう。

そこで軽食と紅茶を楽しむ習慣が生まれました。

これがアフタヌーンティーの始まりだと言われています。

一説には、ベッドフォード公爵夫人アンナが始めたとも伝えられています。

午後になると空腹を感じる。

そこで紅茶と軽い食事を用意させた。

やがて友人たちを招くようになり、それが社交の場になったのです。

こうして始まった習慣は、やがてイギリス社会全体へ広がっていきました。

面白いのは、紅茶が単なる飲み物ではなかったことです。

紅茶を飲む時間。

紅茶を飲む場所。

紅茶を飲む相手。

それらすべてに意味がありました。

アフタヌーンティーは、一日の中に静かな区切りをつくる儀式だったのです。

くまはこの話がとても好きです。

なぜなら、お茶には時間を整える力があると思うからです。

忙しい日でも、

一杯のお茶を淹れる。

少しだけ座る。

深呼吸する。

それだけで時間の流れ方が変わります。

イギリス人は、それを文化として定着させたのかもしれません。

もちろん、そこには作法もありました。

カップの持ち方。

ミルクの入れ方。

砂糖の使い方。

現代では気軽に楽しむことが多くなりましたが、かつてはそうした所作にも意味がありました。

しかしくまは、形式そのものよりも、その奥にある精神の方が大切だと思います。

人と人が向き合う時間。

慌ただしい日常を少しだけ止める時間。

それがアフタヌーンティーの本質ではないでしょうか。

産業革命の時代。

工場が動き続ける社会の中で、

人々は紅茶を飲みながら一息つきました。

だからくまは、

アフタヌーンティーとは「平穏を共有する文化」だったのではないかと思うのです。

一杯の紅茶は、

単なる嗜好品ではありませんでした。

それは時間を区切り、

人と人を結び、

暮らしに秩序を与える存在だったのです。

現代の私たちも、

忙しい毎日の中で、

ほんの十分でもお茶の時間を持つことができます。

そう考えると、アフタヌーンティーの精神は今も生きているのかもしれません。

次回は中国へ向かいます。

工夫茶。

茶礼。

そして「人を思うための茶」。

中国の茶文化にはどのような世界が広がっているのでしょうか。

それでは、また次回お会いしましょう。