篩(試験用ふるい)

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📖 定義

標準篩(ふるい)とは、日本工業規格 JIS Z 8801 に基づく、一定の孔径(目開き)を持ったステンレス製の試験器具です。
茶葉の粒度を客観的に区分する際に使用します。


📚 説明

紅茶の製造や研究において、茶葉を粒度ごとに分けるために用います。
日本では JIS Z 8801 が標準規格として制定されており、国際的には ISO 3310 が対応しています。
実験では通常、200 mm φ のステンレス製枠に孔径ごとの篩を重ね、上から粗い順に並べて振とうし、各段の残量を測定します。

📖 JIS Z 8801(日本工業規格)

  • 正式名称:試験用ふるい(金網)
  • 日本国内での粒度試験の標準を定めたものです。
  • 孔径(目開き)の系列が定義されており、日本の産業・研究で一般的に使われます。
  • JIS 独自の系列も含みますが、国際規格 ISO 3310 にほぼ整合する形に改訂されてきています。
  • 枠の径(200 mm, 75 mm など)や網の材質(ステンレス鋼など)も規定しています。

🌍 ISO 3310(国際規格)

  • 正式名称:Test sieves — Technical requirements and testing
  • 国際的な試験用ふるいの規格。
  • 複数のパートに分かれており、
    • Part 1: 金属網 woven wire cloth
    • Part 2: 金属板 perforated plates
    • Part 3: 電鋳(electroformed sheets)
      と網のタイプ別に仕様を規定している。
  • 孔径の系列は「ISO 565」で決められた国際統一シリーズに基づいています。
  • EU・米国・インドなど多くの国で参照され、国際流通品の規格基準になっています。

🔍 違いのまとめ

  • 歴史的に:JIS は日本国内用、ISO は国際基準。
  • 孔径系列:現在はほぼ同じ系列を採用している(ISO 565 系列)。
  • 表記と適用範囲:ISO 3310 の方が「網」「穿孔板」「電鋳」の3タイプ別に詳細、JIS Z 8801 は主に「金網(woven wire cloth)」が中心。
  • 実務上:
    • 日本国内の実験 → JIS Z 8801
    • 国際比較や海外市場向け → ISO 3310
    • 孔径の互換性は高いので、基本的には両者で大きな齟齬はない。

茶葉実験の観点でいうと

  • 茶葉のふるい分けで使う範囲(2.8 mm〜0.18 mmくらい)については、JIS と ISO の数値は共通なので問題なく比較できる。
  • ただし「微細粉(Dust以下)」を厳密に測りたい場合、ISO 3310 の Part 3(電鋳ふるい)規格を使うと精度が高い。

ふるいの種類(ISO 3310)

金属網(woven wire)

細いワイヤーを織って作った“メッシュ”のふるいです。いわゆるふるいで一般的にイメージできる網です。

金属板(perforated plate)

どう作る?

ステンレスなどの薄い板に、規則的な丸穴・長穴を打ち抜いて作ります(パンチング)。

見た目

・ツルっとした板に、均一な穴が並んでいるイメージです。
・穴は円形が多いです。板厚があるぶん、穴は「筒状」に見えます。

得意レンジ

・粗めの孔径(例:数 mm 〜 数十 mm)。
・「ふるい」というより選別スクリーン寄りの用途にも強いです。

長所

  • 丈夫(変形しにくい、目潰れしづらい)
  • 洗浄がラク(ブラシでゴシゴシOK/粉詰まりしにくい)
  • 大きめの粒子の粗選別に最適

短所

  • 細かい目は苦手(0.5 mm以下などは不向き)
  • 板厚があるので、微細粒では通過性がやや落ちることがある

茶葉なら

  • 上段の粗ふるい(例:3.35 / 2.80 / 2.00 mm)として使うとタフで扱いやすいです。
  • ただし JIS/ISO の「試験篩」は一般に金属網が主流なので、板を採用するかは装置や供給元に依存します。

電鋳(electroformed / electroformed nickel)

どう作る?

フォトレジストで“穴の型”を作り、ニッケルを電析して孔径そのものを成形。フォトリソ+電鋳の精密加工。

見た目

・とにかく穴の寸法が正確でエッジがシャープです。
・薄くて均質、金属“板”というより“精密薄膜”の感触に近いです。

得意レンジ

・微細領域(例:≤ 300 μm 程度、もっと細かい領域も可)。
・ISO 3310-3 の対象。

長所

  • 孔径精度が非常に高い(許容差が小さい)
  • 孔の形状が安定、再現性の高い粒度分けができる
  • ごく細かい粉の詰まりが少ない設計(条件にもよる)

短所

  • 高価
  • 薄いので取り扱い注意(曲げやキズに弱い)
  • 薄膜ゆえに洗浄は丁寧に(硬いブラシはNGのことあり)

茶葉なら

  • Dust 以下の微粉を厳密に測りたいときの「奥の手」になります。
  • 0.30 / 0.18 mm よりさらに細かい境界を切りたい研究用途に◎。
  • 普段使いではコストに見合わないことが多く、まずは金属網で十分です。

どれを選ぶべき?

用途おすすめ
茶葉の標準的なふるい分け(Whole/ Broken/ Fannings/ Dust)金属網(woven wire)が基本。JIS/ISOのラインナップが豊富で、0.18–2.8 mm の「紅茶レンジ」を網羅しています。
かなり粗い選別(全葉の上振り落とし等)で頑丈さ重視金属板(perforated plate)を上段に混ぜるとタフ&掃除が楽です。
Dust のさらに下、微粉域を厳密評価電鋳(electroformed)で精密に。コストと取り扱いに注意です。

🧪 実験で用いる目開きの例

茶葉を「全葉 → ブロークン → ファニングス → ダスト」に分けるには、下記の孔径をそろえると便利です。

  • 2.80 mm
  • 2.00 mm(≈10 mesh)
  • 1.70 mm(≈12 mesh)
  • 1.18 mm(≈16 mesh)
  • 0.85 mm(≈20 mesh)
  • 0.60 mm(≈30 mesh)
  • 0.425 mm(≈40 mesh)
  • 0.30 mm(≈50 mesh)
  • 0.18 mm(≈80 mesh)
  • +受皿・フタ

※最上段に 3.35 mm を足すと特大全葉を分けやすく、Fannings/Dustの境界を安定させるなら 0.71 mm を追加します。


📚 分類目安

区分主に残る篩段粒度イメージ
Whole Leaf2.80 mm 以上全葉タイプ、長いワイヤリーリーフ
Broken1.18–2.00 mmBOP(ブロークンオレンジペコー)相当
Fannings0.60–1.18 mmBOPF 〜 ティーバッグ用細粒
Dust0.18–0.60 mm微粉末、抽出が速い
Ultra-fine0.18 mm 通過ダスト以下の微粉

茶種・ロール条件で最適境界は変わります。まずは上記区間で質量%を出し、必要に応じて境界を微調整します。


⚙ 実験手順

  1. 試料量:50–100 g の乾燥茶葉
  2. 篩の積み方:粗い順に上から並べ、下に受皿を置く
  3. 振とう:5–10 分(振とう機または一定リズムの手振り)
  4. 残量測定:各篩ごとに残った量を秤量し、全量に対する百分率を算出
  5. 記録:粒度分布の%、代表的な葉形の観察(wirey / curly など)、写真記録

🧾 注意点

  • 茶葉の含水率を一定にしてから計測する(湿っていると詰まりやすい)
  • 微粉は静電気で付着するのでブラシやエアで除去
  • 使用後はブラシ清掃 → 必要に応じて水洗い・乾燥

🍂 紅茶文化における意味

  • インドやスリランカの茶園や紅茶工場では、ふるい分けによって “Leaf/Broken/Fannings/Dust” と等級を分け、市場流通に直結します。
  • 家庭や研究の実験でも、この区分を再現することで テイスティング条件の統一等級比較が可能になります。
  • 粒度分布は茶葉の 抽出速度風味の安定性 に大きく影響します。

🫖 英語例文

英文: Tea leaves were separated using JIS standard sieves to determine the proportion of whole, broken, fannings, and dust.

和訳: 茶葉は JIS 規格篩を用いてふるい分けられ、全葉・ブロークン・ファニングス・ダストの比率が測定された。