聞く紅茶教室
講義時間:約4分
第68講 紅茶とデザイン様式(5)
アール・デコと「都市の紅茶」
アール・ヌーヴォーが、
自然と曲線の美学だったとすれば、
アール・デコは、
都市と直線の美学でした。
1920年代、
都市は急速に近代化していきます。
建物は高くなり、
ガラスと鉄が増え、
人々の暮らしの速度も変わっていきました。
ティールームの景色も変わります。
鏡。
クローム。
幾何学模様。
そこでは、
「自然の優美さ」より、
「整理された機能美」が重視されました。
ティーポットも、
すっきりした形へ変わっていきます。
カップには、
幾何学模様。
線はシャープに。
紅茶は、
「都市生活のリズム」に合わせた飲み物へ変化していったのです。
けれど、
どれだけ時代が速くなっても、
紅茶は完全な効率だけにはなりませんでした。
そこにはまだ、
「少し立ち止まる時間」が残されていたのです。
くまのひとりごと
都市が発展すると、
人間の時間は速くなります。
電車。
自動車。
エレベーター。
人々は、
どんどん速く移動し、
どんどん速く働くようになりました。
けれど、
そんな時代になっても、
紅茶だけは、
少しだけ人間を立ち止まらせます。
お湯を沸かし、
茶葉を待ち、
カップへ注ぐ。
その小さな「間」が、
人間に必要だったのかもしれないと、
くまは思います。