聞く紅茶教室

講義時間:約8分

第76講 紅茶と物語世界(6)

6.少女文化と紅茶

しかし、日本で紅茶がもっとも強く「夢の飲み物」として定着した場所は、歌ではありません。

少女漫画です。


その代表が、『キャンディ・キャンディ』でした。

この作品で紅茶は、単なる「おしゃれな小物」ではありません。

階級。
育ち。
人間関係。
少女の成長。

そうしたものを示す、重要な物語装置として描かれているのです。


特に重要なのは、

「少女の成長」と
「紅茶との距離」

が一致している点です。

紅茶とは、

「少女が大人の世界へ近づくための儀式」

として描かれていました。

つまり紅茶は、

ヨーロッパ的教養。
階級。
女性らしさ。

それらと結びついた象徴だったのです。


ポニーの家では、紅茶文化はまだ遠い存在です。

そこには素朴な世界があります。

しかしアードレー家へ移ると、本格的なティーセットが登場します。

そこにはサロン文化があります。

さらに、ステアやアンソニーとの会話に現れる紅茶は、

「大人の世界への入口」

として機能しています。

つまり紅茶を飲む場面そのものが、

「階級・教養・淑女性への移行」

を示す節目になっているのです。


しかもこれは、アニメで追加された演出ではありません。

原作漫画の段階ですでに成立していたモチーフです。

つまり紅茶は、あとから付け足された小道具ではなく、

少女文化の中に最初から組み込まれていた文化要素だったのです。


日本の少女文化は、紅茶を、

「現実の飲み物」

としてではなく、

「紅茶を飲める世界へ入っていく物語」

として受け取っていきました。

だから日本における紅茶は、

コーヒーのように「現実の苦味」を象徴するのではなく、

「夢と憧れの甘さを守るための飲み物」

として機能してきたのです。


くまのひとりごと

アニメでも、
原作の漫画でも、
『キャンディ・キャンディ』では、
紅茶が非常に重要なものとして、
描かれています。

日本の漫画の中でも、
『キャンディ・キャンディ』ほど、
紅茶をしっかりと取り入れた作品は、
ありません。

しかもこの作品は、
単に紅茶が出てくるだけではありません。

物語そのものが、
まぎれもない名作なのです。

そのような名作漫画の中で、
紅茶が活躍しているのですから、
くまとしてはぜひ、
みなさんに読んでほしいと思うのです。

しかし、この名作は、
作画を担当した、
いがらしゆみこ氏が原因で、
絶版になったままだったり、
アニメも封印されたりしています。

何とももったいなく、腹立たしい話です。
でも、日本には、
かつて紅茶を活かしきった、
名作があったことは、
伝え続けたいと思っています。