聞く紅茶教室

講義時間:約10分

第82講 六大茶類の誕生

お茶には、

緑茶。
白茶。
黄茶。
烏龍茶。
紅茶。
黒茶。

という、
六つの大きな分類があります。

これを、
「六大茶類」

と呼びます。


でも、
この分類は、
最初から存在していたわけではありません。

長い歴史の中で、
人々が茶を作り続けるうちに、

「どう整理すればよいのか」

を考える必要が出てきたのです。


特に二十世紀に入ると、
中国では、
茶を科学的に研究する動きが強まっていきました。

その中で、
大きな役割を果たした人物がいます。

陳椽。

中国の茶学者です。


当時の中国では、
地域ごとに、
お茶の呼び方や分類方法が違っていました。

つまり、
経験的には分かっていても、

「共通の整理方法」

がなかったのです。


そこで陳椽は、

茶葉の形。
加工方法。
酸化の度合い。

そうしたものを比較しながら、

すべてのお茶を、
六つの型へ整理していきました。


それが、

緑茶。
白茶。
黄茶。
青茶。
紅茶。
黒茶。

という、
六大茶類です。


ここで少し面白いのが、

「青茶」

という言葉です。

日本では、
あまり聞き慣れないかもしれません。


青茶とは、
一般に、

烏龍茶

のことを指します。

英語では、
oolong tea。

つまり、
「ウーロン茶」

という名前の方が、
世界的には有名なのです。


そのため、

「青茶という分類は消えたのですか?」

と感じる人もいます。

でも実際には、
そうではありません。

中国語圏では今でも、

青茶

は、
とても重要な分類なのです。


つまり、
お茶の分類は、

科学だけではなく、
言葉や文化とも、
深く結びついている。

ということなのです。


さらに陳椽は、
単なる技術分類としてではなく、

「人が自然にどこまで介入するか」

という視点でも、
茶を見ていました。


たとえば緑茶は、
最初に加熱して、
酵素の働きを止めます。

自然の変化を、
早い段階で止めるお茶です。


白茶は、
人の手をあまり加えません。

自然に近い形で、
ゆっくり変化させていきます。


黄茶は、
少し密閉しながら、
穏やかに熟させます。


青茶、
つまり烏龍茶では、

葉の縁だけを部分的に酸化させ、
複雑な香りを作り出します。


紅茶では、
酸化を大きく進めます。

そして黒茶では、
微生物による発酵へ進んでいきます。


こうして見ると、
六大茶類とは、

単なる「お茶の種類一覧」

ではないことが分かります。

それは、

人が自然に、
どこまで手を加えるか。

どこで止めるか。

どこから自然へ委ねるか。

その違いを表した、
文化の地図なのです。


さらに興味深いのは、
この分類が、
すべて「色」で表現されていることです。

緑。
白。
黄。
青。
紅。
黒。


しかしこれは、
単純な色分けではありません。

たとえば中国語では、

紅茶

と言います。

でも英語では、

black tea。

つまり、
「黒いお茶」

になります。


逆に、
中国で「黒茶」と呼ばれるものは、
英語では、

dark tea

と訳されます。


つまり、
同じ茶でも、

どの色で感じるか

が、
文化によって違うのです。


青茶の「青」も、
単なる色ではありません。

若さ。
生命感。
成熟の途中。

そんな、
あいだの色を表しています。


つまり六大茶類とは、

味覚だけではなく、

香り。
感覚。
文化。

そうしたものまで含めて、
整理された体系なのです。


その後、
この分類は、
中国の国家標準へと整備されていきました。

そしてさらに、
世界共通の分類へと、
つながっていきます。


六大茶類とは、

単なる分類表ではありません。

それは、

人が自然をどう理解し、
どう関わり、
どこで手を離すか。

その思想を表した、
静かな文化の地図なのです。


くまのひとりごと

くまは、
六大茶類を知った時、

「お茶って、
こんなに整理されていたのか」

と驚きました。

でももっと面白かったのは、

この分類が、
単なる科学ではなく、

人間の感覚や文化まで、
含んでいることでした。

緑。
白。
黄。
青。
紅。
黒。

その色の呼び方だけでも、
国によって感じ方が違います。

つまりお茶とは、
植物である前に、

「人間がどう世界を感じたか」

を映しているものなのかもしれません。

くまは、
そんな風に思うのです。