聞く紅茶教室

講義時間:約9分

第20講 東インド会社

茶を国家財政へ変えた組織

茶がヨーロッパへ広がっていった背景には、

巨大な組織の存在がありました。

東インド会社です。

くまは、
この名前を聞くたびに、

「国家と商社が合体した存在」

みたいだな、
と思います。

しかも実は、

東インド会社は、
ひとつではありません。

最初に海の覇権を握っていたのは、

ポルトガル。

そしてオランダでした。

特に重要なのが、

VOC。

オランダ東インド会社です。

VOCは、
かなり異常な組織でした。

商社。

海軍。

国家。

それらが、
ほとんど一体化していたのです。

船を持つ。

武装する。

交易する。

独占権を持つ。

場合によっては戦う。

つまりVOCは、

「海の上に存在する半国家」

みたいな存在でした。

そして彼らは、

茶を、

「大量輸送できる商品」

として扱い始めます。

ここが非常に重要です。

それまで茶は、

高価な薬。

珍しい葉。

そういう側面が強かった。

けれどVOCは、

茶を、

物流へ組み込める商品

として見始めました。

モンスーンに合わせた定期船。

港での再販。

アムステルダムでのオークション。

つまり茶はここで、

世界流通システム

へ乗り始めたのです。

そして後に、
主役はイギリスへ移ります。

EIC。

イギリス東インド会社です。

くまは、
ここから世界が変わったと思っています。

なぜならEICは、

茶を、

国家財政そのもの

へ組み込んだからです。

茶を輸入する。

税をかける。

大量消費させる。

つまり、

「飲めば飲むほど国庫が潤う」

という構造を作ったのです。

これはかなり大きい。

茶はここで、

嗜好品

から、

国家を支える商品

へ変わります。

さらにイギリスは、

茶文化を、
少しずつ階級社会へ広げていきます。

宮廷。

上流階級。

中産階級。

家庭。

つまり茶は、

「一部の贅沢品」

ではなく、

国民全体の文化

へ変わり始めていったのです。

くまは、
ここに紅茶の怖さと面白さを感じます。

紅茶って、

ただ美味しいから広がったわけではない。

そこには、

帝国。

税。

物流。

国家戦略。

そういう巨大な構造が、
後ろに存在していたのです。

そしてこの流れが、

後にイギリスを、

世界最大の「紅茶国家」

へ変えていくことになります。


くまのワンポイント

「ひがしいんど」と「とういんど」

日本語の歴史書や
古い歴史の教科書などをさかのぼると、
東インド会社という語は
かつて
「ひがしいんどがいしゃ」
と読まれていた時期があります。

これは、明治〜昭和前期に多かった
「外来語を漢字で直訳し、漢字を日本語で読む」
という翻訳慣習の名残です。

そのため、表記は
東印度公司から東印度会社
東印度会社から東インド会社
と変化し、
読みかたも
「ひがしいんど」
から
「とういんど」
へと移行していきます。

なお日本の教育現場では、
昭和60年(1985年)改訂の
高校学習指導要領の段階でも、
正式な読みは
「ひがしいんどがいしゃ」
でした。

当時の教科書。
参考書。
大学入試でも。
この読みが
「正答扱い」であり、
読みが「とうインド」に
統一されていくのは
平成以降のことです。

つまりこの語は、
表記が変わったのではなく

「読みの側が現代化された」

という稀な例で、
世代によって記憶が異なる理由も
ここにあります。


くまのひとこと

くまは、

東インド会社って、

かなり不思議な存在だと思うのです。

商売をしているのに、

軍隊もある。

税にも関わる。

国家も動かす。

今の感覚で言えば、

巨大企業と国家が、
半分混ざったような存在です。

そして茶は、

そんな巨大な仕組みの中で、

世界へ広がっていったのです。