第Ⅲ部 紅茶の味わい方
第39講

香りを言語化する-テイスティング入門(3)

読了目安:7分

学習目標

  1. 紅茶の香りを言葉にするための基本語彙を知り、ISO 6078 のような官能評価語彙や、トップ・ミドル・ボトムという香りの層の考え方を理解する。

3行まとめ

  • 紅茶の香りを語るには、感覚だけでなく、言葉の道具が必要です。
  • ISO 6078 のような官能評価語彙は、香りや味を共有するための基礎になります。
  • また、香りをトップ・ミドル・ボトムの層として見ると、紅茶の香りの変化を追いやすくなります。

この講義の問い

  • 紅茶の香りを、他の人にも伝わる言葉にするには、どのような見方が必要でしょうか。

紅茶の香りは、とても豊かです。

けれど、感じた香りをそのまま言葉にするのは簡単ではありません。

今回は、香りを読むための基本語彙と、香りの層という考え方を見ていきます。

第2章 テイスティング用語

香りを言語化する道具

今回は「香りの観察」を言語に落とすための基礎をまとめます。ISO語彙・産地差・比喩の扱いを Tea World 仕様で整理します。


1.ISO 6078 の語彙と紅茶の官能評価

紅茶の世界には、本来「香り・味・渋み」を精密に扱う国際規格(ISO 6078:Tea — Vocabulary)があります。

しかし現状、日本ではほとんど知られていません。そこでTea World では、ISO語彙を「そのままではなく」紅茶文化と一般の感覚に合わせて最適化します。

ISO語彙の基本構造

以下のような語彙群があります。

Aroma(香気)
Flavour(風味)
Briskness(キレ/活性)
Body(ボディ/厚み)
Astringency(渋味)
Colour(水色)
Brightness(明度)
Strength(強さ)

これらは「Tea World ことば辞典」で参考訳を作って掲載していますので、いつでも詳細を参照できる形になっています。ISO 6078は翻訳してはいけないことになっているので、あくまでも「参考訳」なのです。

ISO 6078の用語だけを参照したい場合は

ISO 6078 用語(A–Z)🧪ISO 6078 収録用語

をご参照ください。またISO 6078自体については、紅茶資料室『ISO 6078:1982「紅茶用語集」日本語ガイド』をご覧下さい。

とはいえ、みなさんのほとんどの方はプロのテイスターやブレンダー、あるいはバイヤーなどになるわけではありませんからISO語彙を丸暗記する必要はありません。気になったものを拾い読みして「こういう意味で使うのか」と眺めて頂ければ実は十分です。ただ、この言葉をいくつか覚えておくと、ティスティングの時に正確な言葉が使えるので知っておいて損はありません。もちろん、必要に応じて、Tea Worldの「紅茶ことば辞典」を使って頂くので全く問題ありません。

ちなみにプロを目指す人は暗記してください。また、数はあまり出ませんが、紅茶検定のアドバンスを受験する予定のある人はできるだけ覚えましょう。

暗記しやすいように10問ずつのクイズ形式のプログラムもTea Worldでは用意してあります。

今日の10問(ISO)から利用できます。

閑話休題。
つまり重要なのは、

「香りの変化」を記述するための共通言語を持つこと

森のくま

です。


2.香りの構造(トップ/ミドル/ボトム)

Tea World のテイスティングの核は、香りを「3階層の立体構造」として捉えることにあります。

Top Note(トップ)

  • 湯を注いだ瞬間〜1分程度。
  • 揮発性が高く、軽い・華やかな・透明感のある香りがここに乗ります。
  • 例:花、シトラス、青さ、微細な甘さ。

Middle Note(ミドル)

  • 温度が少し下がり、45〜55℃帯で出る「本体」です。
  • 産地差・加工・保存状態が最もよく現れます。
  • 例:果実、穀物、蜜、熟成香、ウッディ。

Bottom Note(ボトム)

  • 冷めてから初めて姿を現す「基礎の香り」です。
  • タンニンや土壌の要素が深く関わります。
  • 例:樹皮、スパイス、ロースト、土壌、黒糖系の甘さ。

トップ → ミドル → ボトム

の流れは、まさに紅茶が語る「香りの物語」です。
これを理解すると、テイスティングが一気に「読める技術」へ変わります。

森のくまのひとこと

紅茶を語るための言葉があります。

その言葉が表すものを統一して誰でも同じ香りや風味を語り合えるようにしようとしているのがISO6078の言葉たちです。

残念ながらISO6078は翻訳してはいけないことになっています。

だからくまは「解説」と「参考訳」を作りました。

これは1982年から2026年現在まで誰もやってこなかったことなのです。

これらは当然誰でも無料で使うことができます。

ぜひ活用してください。

今日のポイント

  • 香りの言語化は、難しい比喩を使うことではありません。
  • まづは、香りがどのタイミングで立ち上がり、どのように広がり、どのように残るかを見ることが大切です。