テイスティング軸を作る-テイスティング実践編(3)
学習目標
- 紅茶を比べるための自分なりの観察軸を作り、香り・質感・温度変化を手がかりに評価を安定させる方法を理解する。
3行まとめ
- テイスティングでは、何を見ているのかを決めることが大切です。
- 香り・質感・温度変化のどこに注目するかで、紅茶の見え方は変わります。
- 自分の軸を持つことで、好き嫌いだけに流されない観察ができるようになります。
この講義の問い
- 紅茶を飲むとき、自分は香り・質感・温度変化のうち、どこに最も注目しているでしょうか。
紅茶を比べようとすると、つい「好きか嫌いか」で判断してしまいます。
しかし、テイスティングではその前に、自分が何を見ているのかを決める必要があります。
香りを見るのか、質感を見るのか、温度による変化を見るのか。
軸を持つことで、紅茶の印象は少しずつ整理されていきます。
第5章 評価軸(テイスティング軸)の作り方
軸を持つと、紅茶はただの飲み物から「読める物語」へ変わります。
テイスティングとは、軸を育てる行為なのです。
紅茶のテイスティングで最も大切なのは「軸」を一本持つことです。
軸とは「自分が紅茶をどう捉えるか」の中心線、言い換えれば方向性の「ものさし」です。
軸を持つことで、以下のような効果が出てきます。
- 評価がブレない
- 好き嫌いに振り回されない
- 香りの変化が読みやすくなる
- 比較テイスティングの精度が上がる
つまり、紅茶が「語りかけてくる」ようになるのです。
1.なぜ「軸」が必要なのか
初心者が最も迷う理由は「どこを見ればよいか分からない」からです。
香りには無数の語彙があり、渋みの強弱も、余韻の方向も様々です。だからこそ軸が必要になります。
軸とは……
「私はこの方向を中心に紅茶を読む」
という「基準」のことです。
この基準が定まると、紅茶の世界で「地図」を持った状態になります。
2.香りを「同心円」で捉える方法(Tea World の中心理論)
ここが本章の最重要ポイントで、今回と次回の要となるものです。
Tea World の香り軸は
「五方向 × 同心円」
で構成されます。
🔸 五方向(フレーバーホイールの中心軸)
- 花(Floral)
- 果(Fruity)
- 樹木(Woody / Nutty)
- 蜜(Honey / Sweet)
- 青さ(Green / Fresh)
これらは「方向性」を示す軸です。
🔸 同心円(香りの「深さ」を示すものです)
- 外側:トップ(軽い・揮発・明るい)
- 中央:ミドル(本体・本質・品種の核)
- 内側:ボトム(深い・骨格・土壌感)
→ 五方向に「深さ(立体感)」を重ねたモデル
これが Tea World の香り軸です。
視覚的には、
「中央から五方向に伸びる星型の地図」のようになります。
3.テクスチャー軸(タンニン/重さ/濃度)
香りは「方向」ですが、テクスチャーは「質感」です。
🔸軸の例
- 渋みの質(短い/長い)
- ボディ(軽い/重い)
- 密度(薄い/厚い)
- 丸み(角がある/ない)
テクスチャー軸は、紅茶の「体格」を見る軸です。
紅茶は香りだけでは評価できません。質感と香りの組み合わせで一本の軸が完成します。
4.温度帯の軸
紅茶の香りは温度で変化します。温度帯の軸は、熱い→微温→冷めた、の3つです。
その変化をどう捉えるかも「軸」のひとつになります。
- 熱い時:揮発系
- 温度が落ちた時:ミドルの旨味
- 冷めた時:ボトムの甘さ・骨格
どの温度帯で最も「その茶がらしくなるか」を自分の軸として育てて頂きたいと思っています。
5.主軸を1本だけ決める
最初に決めるべきは主軸(メイン軸)です。
例:
「花方向に伸びる茶が好き」
「渋みの質が良い茶を高評価する」
「温度が落ちてから味が開く茶に惹かれる」
「香りが“横に広がる”国産紅茶が好み」
主軸は「中心に置く価値観」なので、1本に絞ることが重要です。
軸を増やすと判断がブレてしまいます。
6.サブ軸との組み合わせで「あなたの地図」ができる
主軸が育ってきたら、サブ軸を1〜2本だけ追加します。
例:
主軸:花方向
サブ軸:渋みの質(短く切れる)
サブ軸:温度が冷めた時の甘さ
これだけで、あなただけの「紅茶観」が完成するのです。
くまはTea World が
「あなたの軸はこれです」
と言うのではなく、
「軸を育てる方法」を伝えるメディア
森のくま
であって欲しいと思っているのです。
7.ブレンド茶とシングルオリジンで軸が変わる理由
重要ポイント
- ブレンド=方向性の「合成」
- シングル=方向性の「純度」
ブレンドは複数方向に香りが伸びるため、軸を読む練習に向かないことが多いです。
一方でシングルは、土地と品種の「純粋な方向性」が出るので、軸の訓練に最適です。
→ 軸を育てる時期はシングルで。
→ 軸が育ったらブレンドの設計意図が読めるようになる。
この順番が重要です。
8.「自分らしい軸」という宝物
軸の最終目的は「あなたが紅茶をどう読むか」という美しい個性を育てることです。
同じ紅茶を飲んでも、人によって軸の読み方は変わります。
- 香りを中心に読む人
- 渋みの質を中心に読む人
- 温度変化の物語を読む人
- 余韻の長さに価値を置く人
これらはどれが正しいというものではなく、すべてが個性であり、美しい「読み方」なのです。
軸を育てるとは、紅茶を通して「自分の価値観」を育てることなのです。
森のくま
今日のポイント
- テイスティング軸とは、紅茶を見るための「ものさし」です。
- 香り軸では、花・果実・木質・甘さ・青さなどの方向を見ます。
- 質感軸では、重さ・厚み・渋み・丸み・なめらかさを見ます。
- 温度変化を見ると、熱いとき・冷めたときの香味の違いが分かります。
- 最初は主軸を一つだけ決めると、観察が安定します。
森のくまのひとこと
自分のテイスティングの「ものさし」を作ることが目標です。
Tea Worldではその「ものさし」を「軸」と呼んでいます。
香り、質感、温度変化の3つの軸がありますが、どれかわかりやすい軸を最初に感じとって、それをベースに観察するのがコツです。