第Ⅲ部 紅茶の味わい方
第45講

テイスティング軸を作る-テイスティング実践編(3)

読了目安:10分

学習目標

  1. 紅茶を比べるための自分なりの観察軸を作り、香り・質感・温度変化を手がかりに評価を安定させる方法を理解する。

3行まとめ

  • テイスティングでは、何を見ているのかを決めることが大切です。
  • 香り・質感・温度変化のどこに注目するかで、紅茶の見え方は変わります。
  • 自分の軸を持つことで、好き嫌いだけに流されない観察ができるようになります。

この講義の問い

  • 紅茶を飲むとき、自分は香り・質感・温度変化のうち、どこに最も注目しているでしょうか。

紅茶を比べようとすると、つい「好きか嫌いか」で判断してしまいます。

しかし、テイスティングではその前に、自分が何を見ているのかを決める必要があります。

香りを見るのか、質感を見るのか、温度による変化を見るのか。

軸を持つことで、紅茶の印象は少しずつ整理されていきます。

第5章 評価軸(テイスティング軸)の作り方

軸を持つと、紅茶はただの飲み物から「読める物語」へ変わります。
テイスティングとは、軸を育てる行為なのです。

紅茶のテイスティングで最も大切なのは「軸」を一本持つことです。

軸とは「自分が紅茶をどう捉えるか」の中心線、言い換えれば方向性の「ものさし」です。

軸を持つことで、以下のような効果が出てきます。

  • 評価がブレない
  • 好き嫌いに振り回されない
  • 香りの変化が読みやすくなる
  • 比較テイスティングの精度が上がる

つまり、紅茶が「語りかけてくる」ようになるのです。


1.なぜ「軸」が必要なのか

初心者が最も迷う理由は「どこを見ればよいか分からない」からです。

香りには無数の語彙があり、渋みの強弱も、余韻の方向も様々です。だからこそ軸が必要になります。

軸とは……

「私はこの方向を中心に紅茶を読む」

という「基準」のことです。

この基準が定まると、紅茶の世界で「地図」を持った状態になります。


2.香りを「同心円」で捉える方法(Tea World の中心理論)

ここが本章の最重要ポイントで、今回と次回の要となるものです。

Tea World の香り軸は
「五方向 × 同心円」
で構成されます。

🔸 五方向(フレーバーホイールの中心軸)

  • 花(Floral)
  • 果(Fruity)
  • 樹木(Woody / Nutty)
  • 蜜(Honey / Sweet)
  • 青さ(Green / Fresh)

これらは「方向性」を示す軸です。

🔸 同心円(香りの「深さ」を示すものです)

  • 外側:トップ(軽い・揮発・明るい)
  • 中央:ミドル(本体・本質・品種の核)
  • 内側:ボトム(深い・骨格・土壌感)

→ 五方向に「深さ(立体感)」を重ねたモデル

これが Tea World の香り軸です。

視覚的には、
「中央から五方向に伸びる星型の地図」のようになります。


3.テクスチャー軸(タンニン/重さ/濃度)

香りは「方向」ですが、テクスチャーは「質感」です。

🔸軸の例

  • 渋みの質(短い/長い)
  • ボディ(軽い/重い)
  • 密度(薄い/厚い)
  • 丸み(角がある/ない)

テクスチャー軸は、紅茶の「体格」を見る軸です。

紅茶は香りだけでは評価できません。質感と香りの組み合わせで一本の軸が完成します。


4.温度帯の軸

紅茶の香りは温度で変化します。温度帯の軸は、熱い→微温→冷めた、の3つです。
その変化をどう捉えるかも「軸」のひとつになります。

  • 熱い時:揮発系
  • 温度が落ちた時:ミドルの旨味
  • 冷めた時:ボトムの甘さ・骨格

どの温度帯で最も「その茶がらしくなるか」を自分の軸として育てて頂きたいと思っています。


5.主軸を1本だけ決める

最初に決めるべきは主軸(メイン軸)です。

例:
「花方向に伸びる茶が好き」
「渋みの質が良い茶を高評価する」
「温度が落ちてから味が開く茶に惹かれる」
「香りが“横に広がる”国産紅茶が好み」

主軸は「中心に置く価値観」なので、1本に絞ることが重要です。

軸を増やすと判断がブレてしまいます。


6.サブ軸との組み合わせで「あなたの地図」ができる

主軸が育ってきたら、サブ軸を1〜2本だけ追加します。

例:
主軸:花方向
サブ軸:渋みの質(短く切れる)
サブ軸:温度が冷めた時の甘さ

これだけで、あなただけの「紅茶観」が完成するのです。

くまはTea World が
「あなたの軸はこれです」
と言うのではなく、

「軸を育てる方法」を伝えるメディア

森のくま

であって欲しいと思っているのです。


7.ブレンド茶とシングルオリジンで軸が変わる理由

重要ポイント

  • ブレンド=方向性の「合成」
  • シングル=方向性の「純度」

ブレンドは複数方向に香りが伸びるため、軸を読む練習に向かないことが多いです。

一方でシングルは、土地と品種の「純粋な方向性」が出るので、軸の訓練に最適です。

→ 軸を育てる時期はシングルで。
→ 軸が育ったらブレンドの設計意図が読めるようになる。

この順番が重要です。


8.「自分らしい軸」という宝物

軸の最終目的は「あなたが紅茶をどう読むか」という美しい個性を育てることです。

同じ紅茶を飲んでも、人によって軸の読み方は変わります。

  • 香りを中心に読む人
  • 渋みの質を中心に読む人
  • 温度変化の物語を読む人
  • 余韻の長さに価値を置く人

これらはどれが正しいというものではなく、すべてが個性であり、美しい「読み方」なのです。

軸を育てるとは、紅茶を通して「自分の価値観」を育てることなのです。

森のくま

森のくまのひとこと

自分のテイスティングの「ものさし」を作ることが目標です。

Tea Worldではその「ものさし」を「軸」と呼んでいます。

香り、質感、温度変化の3つの軸がありますが、どれかわかりやすい軸を最初に感じとって、それをベースに観察するのがコツです。

今日のポイント

  • テイスティング軸とは、紅茶を見るための「ものさし」です。
  • 香り軸では、花・果実・木質・甘さ・青さなどの方向を見ます。
  • 質感軸では、重さ・厚み・渋み・丸み・なめらかさを見ます。
  • 温度変化を見ると、熱いとき・冷めたときの香味の違いが分かります。
  • 最初は主軸を一つだけ決めると、観察が安定します。