季節性(旬)-テイスティング応用編(2)
学習目標
- 紅茶の香りや味わいが、季節・標高・気候・収穫時期によって変化することを理解し、紅茶を「旬」のある飲み物として読む視点を身につける。
3行まとめ
- 紅茶は、いつでも同じ味になる工業製品ではありません。
- 季節や標高、雨や風、その年の気候によって香りや味わいが変わります。
- 旬を読むことは、紅茶を農作物として受け止めることでもあります。
この講義の問い
- 同じ産地の紅茶でも、季節が変わると香りや味わいはどのように変わるでしょうか。
紅茶は、毎年同じ味になるものではありません。茶葉は畑で育ち、季節の光や雨、風や気温の影響を受けます。
だからこそ、紅茶には旬があります。
季節ごとの違いを読むことは、紅茶をただの商品としてではなく、土地と時間を映す飲み物として味わうことにつながります。
第7章 季節性(旬)を読む
1.紅茶はヴィンテージである
紅茶は「固定の味」ではなく、土地・季節・天候・風がつくる「一年もの」の芸術です。
ワインや日本茶と同じように、紅茶にも「旬=ヴィンテージ」があります。
一年のどの時期に摘まれたかで、香りの方向性も、ボディも、余韻も、まったく変わります。テイスティングが本当に面白くなるのはこの「旬の変化」を読めるようになってからです。
2.標高と風が香りをつくる
紅茶の香りを決める要因は多くありますが、季節性を理解するうえで特に重要なのは2つです
標高
標高が高くなるほど
- 低温成長
- 芯芽が小さく、香気成分が濃縮
- 花・青さ方向が強く出やすい
ダージリンの高標高農園がフローラルに香るのはこのためです。
風
風の強弱は揮発性香気成分の蓄積に影響します。
- 乾いた風 → 香りが濃縮しやすい
- 霧が多い場所 → 青さ・若芽香が残りやすい
「ウバのミント香」は、ウバの谷に吹く「カチャナワ風」によるものです。
3.First / Second / Autumnal の違い
紅茶の旬は、大きく3つに分けられます。
First Flush(春摘み)
- 方向:花 × 青さ(トップ)
- 新芽の香り
- 若く、軽く、明るい
- 渋みが細く、短く、キレが良い
- 余韻は軽く、甘さは控えめ
- 香りの立ち上がりが最も華やか
香りの方向が「上」に伸びる茶です。ホイールの外側を大きく使うことが多いです。
Second Flush(夏摘み)
- 方向:果 × 蜜 × 樹木(ミドル)
- ボディが強く、濃い
- 熟成果実感
- 蜜様香気
- 渋みは厚みがある
- 余韻が伸びる
特にダージリンのセカンドは「マスカテル香」で知られます。
香りの方向が「横に広がる」茶です。
五方向ホイールの中央〜外側を広く使うパターンになりやすいです。
※マスカテル香に関してはこちらを参照してください。
Autumnal(秋摘み)
- 方向:樹木 × 蜜 × 落ち着き(ボトム)
- 冷めるほど甘くなる
- 渋みは短く、角がない
- 香りは円熟して穏やか
- シングルよりブレンド向きの個性
香りの方向が「内側に沈む」茶です。
ホイールの中央〜内側を読むと分かりやすいです。
🧸くまの一言
くまはAutumnalをシングルで飲むのも結構好きです。ブレンド向きとよく言われますが、そのままでも、どっしりとしていて、おいしいと思います。
4.年ごとの「育ち方」
同じ農園、同じ品種でも、年によって全く違います。理由は次のような要素によります。
- 冬の気温
- 春先の霧と雨の量
- 日照時間
- 風の強さ
- 病害
- 加工のタイミング
これらによって香気成分の比率が変わるためです。
特に春摘み(First)は天候の影響が大きく、「軽い花」から「深い若芽」までの振れ幅があります。この辺りはワインのヴィンテージに極めて近いです。
5.国産紅茶の年変動が大きい理由
国産紅茶は、ダージリンやスリランカに比べて「旬の違いが味に出やすい」傾向があります。
理由
① 標高よりも「気象条件の年差」が大きい
日本は気候の振れ幅が他の産地より極端です。
→ 香りの方向が年ごとに変わりやすい。
② 発酵・火入れの調整幅が広い
生産者によって加工の哲学が違うため、同じ園でも毎年まったく違う表情になるのです。
③ 国産紅茶は「香りの密度」が繊細
繊細ゆえに、天候や湿度の変化が香り方向を大きく動かします。
→ ホイールで「横方向に広がる」読解が得意です。
6.旬を見るコツ
情報ではなく「変化」で読む
「今年の出来は?」という情報よりも、実際に飲んで比較する方が100倍早いです。旬は「記述」ではなく「変化」で理解します。
- 春の軽さから
- 夏の厚み
- 秋の落ち着き
この3つを「年をまたいで」読むと、紅茶が立体的に見えてきます。
7.同じ農園の3季比較は最強の学習法
例えばダージリンのある農園の
- First
- Second
- Autumnal
を並べて飲むと、ホイールの「方向の移動」が目で見えるようになります。
1年の中で香りの矢印がどう動くか?
これが理解できると、テイスティング力が劇的に伸びます。
今日のポイント
- 紅茶には、収穫時期による香りや味わいの違いがあります。
- First Flush、Second Flush、Autumnal では、同じ産地でも印象が変わります。
- 標高や気温、雨量、風の影響によって、香りの出方は変わります。
- 同じ農園の季節違いを比べると、紅茶の旬が見えやすくなります。
- 紅茶を「年ごとの表情」として読むと、味わい方が深まります。
森のくまのひとこと
案外忘れられがちですが紅茶は農作物です。
ですから当然、旬というものがあります。
テイスティングを通して「紅茶の旬」を感じてもらえたら、と願っています。