フレーバーティーのテイスティング-テイスティング応用編(7)
学習目標
- フレーバーティーを、香料の印象とベース茶葉の性質に分けて観察し、両者の調和や持続性を読む方法を理解する。
3行まとめ
- フレーバーティーは、香りが強いかどうかだけで見るものではありません。
- 香料の立ち上がり、ベース茶葉との調和、冷めたときのまとまりを分けて観察します。
- 香料と茶葉を二段階で読むことで、フレーバーティーの完成度が見えやすくなります。
この講義の問い
- フレーバーティーを飲むとき、自分は香料の印象と茶葉の味わいを分けて感じ取れているでしょうか。
フレーバーティーは、香りが華やかな分、評価が「香りが強い」「甘い香りがする」で終わりがちです。
しかし、その奥にはベースとなる茶葉があります。
香料がどのように立ち上がり、茶葉とどう重なり、冷めたときにどのように残るのか。
二段階で読むことで、フレーバーティーの見え方は大きく変わります。
第12章 フレーバーティーのテイスティング
フレーバーティーのテイスティングは、通常の紅茶よりも 難しく、そして奥深いものです。そしてこのフレーバーティーのテイスティングは本など含めて、おそらく他で絶対に読むことはできないものだと思います。
フレーバーティーのテイスティングの難しさの理由は簡単で、紅茶の香りと、外から足された香りが「別の法則」で動くからです。
香料は揮発性が高く、温度と時間に対して紅茶以上に敏感です。ゆえに、香りの構造が非常に「崩れやすい」です。
ここでは、初心者でも迷わず読めるようにフレーバーティーの「読み方の核心」をまとめます。
1.香料は「香りのスプリント(短距離走)」である
紅茶の香りが
トップ → ミドル → ボトム
と「時間で動く」のに対し、香料は
トップだけを爆発させて走り抜ける
森のくま
香りの短距離走なのです。そのため、
- 最初は強烈に香る
- 中盤で方向が変わる
- 最後にベース茶葉だけが残る
という構造になります。
最初の1分の香りが「偽物」に近く、3分以降の香りが「本物」に近いという構造になっています。ですから、香料の性質を知らないと、ベース茶葉をまったく読めなくなってしまうのです。
2.ベース茶葉によって、香りの「乗り方」が違う
フレーバーティーを読むときの最重要ポイント。
- Floral(花)系の香料
→ 軽い茶葉(ダージリン First、国産)に乗りやすい
→ 重い茶葉には「浮いて」しまう - Citrus(柑橘)系
→ 軽い・中くらいのボディに合う
(アールグレイのベースがダージリンやセイロンなのはこのため) - Sweet/Honey 系
→ 火入れ強めの茶葉によく馴染む
→ アッサムや祁門で優秀 - Spicy 系
→ ベースが強くないと負ける
(チャイのベースにアッサムが多い理由) - Smoky 系
→ 火入れ弱い茶葉では不自然
(ラプサンスーチョンが特殊なのはこれ)
香料は、茶葉の方向とボディに必づ依存します。だからこそ、フレーバーティーは 「紅茶の方向性を読む力」の応用編いえるのです。
3.軽い香りから先に飛ぶ(崩壊理論)
アールグレイの「香りの寿命が短い」理由はここです。
香料の揮発性は、軽さでほぼ決まっており、
Floral → Fruity → Citrus → Sweet → Woody
の順に飛びやすくなっています。
アールグレイ(ベルガモット)は、Floral + Citrusの組み合わせなので、揮発しやすさは全紅茶中トップレベルなのです。
だから……
- 光で壊れる
- 湿気で飛ぶ
- 時間で弱くなる
- 抽出直後が最大ピーク
という特性が極端に出るのです。
4.フレーバーティーは「2段階で読む」必要がある
5章で作った「テイスティング軸」を応用して、フレーバーティーは二重構造として読みます。
香料の軸(最初に立つ香り)
- Floral 方向か?
- Citrus 方向か?
- 果実系か?
- 甘い香りか?
ベース茶葉の軸(時間とともに見えてくる)
- Honey 方向はあるか
- Woody がどれくらいか
- 渋みの質はどうか
- 余韻の方向はどこか
この 「外側 → 内側」 の二段階を読むことがフレーバーティーのテイスティングの核心です。香料だけで判断すると必づ誤ることになります。
5.香料の「方向」が茶葉を上書きする例
フレーバーティーは、香料と茶葉の方向が合っていないと不自然な方向に引っぱられます。
- 甘い香料 × 軽いベース茶葉
→ 香りの方向が浮く
→ テクスチャーに違和感
→ 「表面だけ甘くて中身が薄い」仕上がりに - Floral × 重い茶葉
→ 上に跳ねる香りと、下に沈むボディが分離
→ 飲むほどに混乱する
→ 余韻は茶葉、香りは香料という分裂状態 - Citrus × 祁門
→ 方向が正反対
→ 香りがチグハグになる
この「方向の不一致」は初心者には読みにくいですが、ホイールを使えばすぐに分かります。
6.アールグレイが壊れやすい理由
創香の構造
アールグレイはベルガモット精油(揮発性99%以上)によって成り立ちます。つまり
- 光で分解
- 酸素で劣化
- 時間で飛散
- 湿気で沈黙
という「香料としての弱さ」を全部持っているのです。
ベース茶葉が軽いとさらに壊れる
- ダージリンベース → 繊細ゆえに崩れやすい
- セイロンベース → 香りに負けやすい
香料と茶葉のどちらかが壊れると、全体のバランスが一気に崩れます。アールグレイは紅茶界で最もメンタルノイズが強い茶です。なので、この章の知識が直接役に立つと思います。
7.フレーバーティーは「通常と軸を変える」必要がある
通常の軸(香り・渋み・余韻)では読みきれない部分があります。
フレーバーティーでは、最初の3分の香りの立ち上がり が極端に重要です。
そこで、軸を以下のように変更します。
フレーバーティーの評価軸
- 香りの立ち上がり(香料の方向と強度)
- 香料の持続(落ち方・消え方)
- ベース茶葉の顔(渋みの質・余韻)
- 茶葉と香料の「統合感」
- 冷めたときのまとまり
特に「統合感」は、フレーバーティー評価の核心です。香料と茶葉がバラバラだと、どちらも美味しくならないからです。
今日のポイント
- フレーバーティーでは、まず香料の立ち上がりを観察します
- 次に、ベース茶葉の渋み・厚み・余韻を見ます。
- 香料だけが強すぎると、茶葉の存在感が見えにくくなります。
- 冷めたときに香りがどう残るかも大切な観察点です。
- よいフレーバーティーは、香料と茶葉が別々ではなく、一つの印象としてまとまります。
森のくまのひとこと
フレーバーティーは香料の性質を意識することが大切です。
そして香料についての知識も必要です。
もちろん、難しい話ではなくて、どのタイプの香料がどういう動きをするか、が分かっていれば大丈夫です。