テイスティングノート-テイスティング応用編(5)
学習目標
- 紅茶の香り・質感・渋み・余韻・温度変化を記録し、自分なりのテイスティング軸を育てるためのノート作成法を理解する。
3行まとめ
- テイスティングノートは、評価を書くためだけのものではありません。
- 感じた香りや変化を記録し、自分の観察軸を育てるための道具です。
- 記録を続けることで、紅茶の見え方と自分の感じ方の両方が分かってきます。
この講義の問い
- 紅茶を飲んだとき、自分は何を記録すれば、その紅茶を後から思い出せるでしょうか。
紅茶の印象は、その場でははっきりしていても、時間が経つと少しずつ薄れていきます。
だからこそ、テイスティングノートが役立ちます。
香り、渋み、口あたり、余韻、温度による変化。
感じたことを記録していくと、紅茶だけでなく、自分の感じ方も少しずつ見えてきます。
第10章 テイスティングノート(記録)の作り方
記録とは「自分の軸」を可視化して育てる行為です。ノートは評価ではなく、変化を書き留める場所です。
紅茶のテイスティングにおいて、記録は上達の最短ルートです。味覚・嗅覚は曖昧で、人の記憶は意外なほど不正確です。
記録することで初めて、
- その紅茶の「方向性」
- 香りの変化
- 温度帯での違い
- 自分の好みの傾向
- 保存状態の影響
が明確になります。
1.記録は「結論」ではなく「変化」を書く
初心者のうちにやりがちな失敗が、
「美味しい/美味しくない」
「香りが強い/弱い」
「好み/好みじゃない」
という「評価」を書いてしまうことです。テイスティングノートで書くべきは結論ではなく、変化です。
温度による変化
- 熱い:花が立つ
- 50℃:蜜が深まる
- 冷めた:渋みだけ残る
香りの方向の変化
- 最初は Floral
- 徐々に Fruity
- 最後は Woody の影が出る
渋みの質の変化
- 最初は細い
- 中盤で骨格
- 最後は落ち着く
変化を書けば、その紅茶の「物語」が読めるようになるのです。
2.香りを5分類で書く
Tea World 版ホイールが真価を発揮する場所です。
書く順番
- Floral(花)
- Fruity(果)
- Green/Fresh(青)
- Honey(蜜)
- Woody(樹木)
書き方の例
- Floral:中(ジャスミン)
- Fruity:小(青リンゴ)
- Green:中
- Honey:大(焦がし蜜)
- Woody:小(ロースト)
「方向」と「強弱」をセットで記録します。
語彙に迷ったら Tea World の ISO 語彙ページを参考にして下さい。
2.温度帯ごとの香り記録
紅茶は温度で香りが3段階に変化します。
- 熱い(80〜90℃)
- 微温(50〜60℃)
- 冷めた(常温)
この3つで別々に香りを書くと、ミドル・ボトムの正体が見えてきます。
例
- 熱い:Floral 大
- 微温:Fruity 中、Honey 小
- 冷:Woody 大(余韻長い)
「香りが変わる」ことの楽しさを体感できます。
3.渋み・テクスチャー・余韻の評価
味の要素は3つに絞るのが、上達の最短ルートです。
渋みの「質」
- 細い
- 太い
- 角がある
- 丸い
- 早く消える
- 長い
テクスチャー
- 軽い
- 重い
- 厚い
- 密度
- 舌の上での広がり方
余韻
- 短い/長い
- 方向:蜜? 果? 樹木?
ここまで書ければ「その茶の顔つき」がノートの上で立ち上がるようになります。
4.写真記録(Dry/Wet/液色)は強力な武器
今はスマホのカメラ機能が非常に優れたものになっています。これをテイスティングに使わないのはもったいない話です。これはDry Leaf ・ Wet Leaf の章とつながりますが後から見直すとわかるものもあるからです。
- Dry Leaf:形・色・締まり
- Wet Leaf:戻り香・仕上げ
- Liquor(水色):透明度・色の強さ・明るさ
写真を並べると、紅茶の抽出と味の関係が格段に見えるようになります。特に Wet Leaf はテイスティングの答え合わせです。
5.同じ銘柄を「1年後に再評価」する価値
これはテイスティングにおける究極の学習法です。この方法を実践すると、劣化による香り・渋みの変化が「確かな経験として」理解できるようになります。
第9章(保存と味)でお話しした内容が、一年後の再テイスティングで完全に実感に変わるのです。テイスティングは「経験の累積」で育ちます。これを体験してもらえたら本物です。
6.記録を続けると「自分の軸」が育つ
記録とは、自分の好みを言葉に変える作業です。
方向性を記録し続けると……
- いつも Floral を選んでいる
- ボトムが強い茶が好き
- Honey の余韻が好み
- 逆に Woody が苦手
など、自分の軸が必づ見えてきます。これがテイスティングの最終目的です。自分の軸さえ分かれば、紅茶選びで迷うことが一気になくなります。
今日のポイント
- ノートには、紅茶名・産地・抽出条件・香り・味・余韻を記録します。
- 最初から正確な専門用語を使おうとしなくても大丈夫です。
- 温度変化ごとの印象を書くと、香りの移り変わりが見えます。
- 写真やフレーバーホイールを併用すると、記録が残しやすくなります。
- 記録を見返すことで、自分の好みや観察軸が育っていきます。
森のくまのひとこと
テイスティングノートは自分と紅茶の関係を豊かにしてくれます。
Tea Worldのフレーバーホイールを印刷してそれに書き込んで、ファイルに綴じておくのも立派なテイスティングノートです。